#06 過去の罠、未来の対策:原野商法から学ぶ土地相続の課題

1970年代から1980年代にかけて、将来的な価値上昇の見込みなどほとんどない未開地や山林を、将来開発が行われるなどとして土地を売り付ける詐欺的な土地取引が流行しました。

これはいわゆる原野商法として知られています。

それから50年近くが経過した今、実際にそのような土地を相続した人や、相続となることを心配した現在の所有者から、当サイトへの掲載を依頼される事例が増えてきました。

サイトに掲載依頼があった原野

上図のように、公図上では、宅地と道路が整然と配置され、あたかも整備された住宅地であるかのように見受けられますが、実際は原生林が生い茂り、この土地へ入るための道路すらも存在しません。

これらの土地では測量や境界標の設置が行われておらず、土地の特定も不可能です。自分の土地を見に行こうなどと、この地に足を踏み入れようものなら、生きて帰れる保証はない、というような場所もあります。

このような土地は評価額が低く、固定資産税なども課されていない場合が多いため、放置されていることが一般的です。


相続した土地を手放す方法のひとつとして、令和5年より創設された「相続土地国庫帰属制度」がありますが、境界が明らかでない土地など一部の土地には適用されないため、原野商法で取得した土地を国へ帰属させることは、現実的には困難という状況です。

相続土地国庫帰属制度について

法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html

また令和6年4月1日から施行される「相続登記の申請義務化」が、こうした原野を処分をしようという行動の追い風となっている可能性があります。

Q.相続登記の義務化とは、どのような内容ですか?
A.相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になります。正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。遺産分割(相続人間の話合い)で不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、遺産分割の内容に応じた登記をする必要があります。

法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A

このような土地を子や孫に残すことは避けるべきですが、処分ができない場合、相続登記の義務化によってその土地を引き継ぐことになります。

自分たちは行ったことも見たことも、行くことすらもできない土地を所有し続けるという状況には、違和感を覚えます。そして今後益々、このような土地の当サイトへの掲載申込みが増えてくると予想しています。

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