#07 非住宅物件の処分を阻む問題:権利と法令の壁

これまでに当サイトに掲載された、もしくは掲載の相談があった不動産の建物の種類は、住宅ばかりに限定されません。住宅以外では個人商店や飲食店、旅館などの小規模なものから、結婚式場、パチンコ店、雑居ビル、ボウリング場など、多岐にわたります。

これらの物件が当サイトに持ち込まれる際の所有者の声としては、以下のようなものがありました。

  • 人口減少により商売が立ち行かなくなった
  • 後継者がいなかった
  • これまでに買い手も引き取り手も現れなかった
  • 建物の解体費が高額で壊すことができずそのまま放置されている

このような現状は各メディアでもしばしば問題として取り上げられていますが、私たちはこのような問題を抱える人々と、日々リアルに物件の処分に向けて活動しています。

そのため、メディアではあまり深く取り上げられないこの問題の実態について提起したいと思います。

  1. 権利が絡む問題
    商店街などでよく見られるケースとして、一団の土地を地主が所有しており、建物は借地権付きとなっている場合があります。借地となっているため、地主による借地権譲渡の承諾が必要だがそれが得られないケースです。
    他には、抵当権者や根抵当権者が現存しない法人であったり、抵当権者が個人であったためにその所在が把握できない、などの理由で抵当権や根抵当権の抹消ができないケースが存在しています。
  2. 法令が絡む問題
    建築基準法では、建物の用途変更に関する規定があります。用途変更を行う際には、新たに建築確認申請が必要になり、許可を得るには建物を現行の規定に合わせる必要があります。類似用途間の用途変更は確認申請が不要であったり、用途変更をする面積が200㎡以下の場合も確認申請は不要ですが、この場合でもその用途に応じた他の法律や条例に適合させる必要があり、結局多額の改修費用が必要となってしまうことがあります。

このように、権利関係や法令によって不動産の譲渡ができない、というケースは、非住宅の物件に多い特殊事情です。住宅に比べて規模が大きいだけに、空き家となってしまった場合の影響やダメージも大きいのが問題です。

権利が絡む問題については、借地上の建物を所有している場合は以前にも述べたとおり、地主との契約関係を把握しておくこと、抵当権・根抵当権については、弁済が完了しているものは、抹消の登記を済ませておくことが重要です。

法令が絡む問題については、環境や防災への意識の高まりに伴い規制が強まる一方で、ストック活用・空き家対策の観点から規制を緩和していこうという動きも顕著です。

しかし、縦割りの傾向が強い行政機関では、それぞれに部課の立場からの主張に終始してしまい、根本の問題解決に至ることは望めません。

今こそ、「空き家問題の解決」といった大局観な視点で、各法令や条例を調整することが求められていると感じます。

商業施設やビルなどの非住宅物件は、住宅物件に比べて空き家となることの景観、防犯、安全上の影響や問題が多大です。これらの影響と、法令などが物件の流通を阻んでいることを冷静に比較し、より柔軟な対応を模索していくことが必要と感じています。

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