#02 空き家問題の裏に潜む農地ジレンマ

まだまだ世間一般には知られていないようですが、農地(田・畑)は農地法によりその譲渡が制限されており、一般の方が容易に譲り受けることはできません(相続による取得はのぞく)。

私たちの食糧を生産する基盤となる農地を保全することが目的のため、農業者以外が譲り受ける際には許可が必要となるなど、厳しい制限があります。

しかしこの農地に関する取り扱いが、不動産の流通に影響を及ぼしています。

先日、地方公共団体(市町村)の空き家相談窓口を通じて寄せられた案件は、次のようなものでした。

☞ かつて農業を営んでいた実家を相続したが、長らく空き家となっており手放したい

すでに遠方に居住する相談者へのヒアリングでは、実家は既に農業を辞めており、「農地は保有していない」との認識でしたが、調査を行った結果、複数の土地が異なる分類で記録されていることが明らかになりました。

具体的な土地の状況は以下の通りです:

スクロールできます
地番906-1906-2906-3906-4907-2
土地登記記録上の地目 (不動産登記法)宅地宅地宅地宅地田(農地)
市町村の固定資産台帳(地方税法)畑(農地)宅地宅地宅地畑(農地)
農業委員会の区分(農地法)農地(青地)農地(青地)
立場によって土地の捉え方に相違が生じている

このように、不動産登記法、地方税法、農地法それぞれの立場から土地の捉え方に相違が生じていることがわかります。もう何年も耕作行為などが行われておらず、農地としての認識はなかった相談者にとっては驚きの事実でした。

特に農業委員会が管轄する農地法において最も高いランクである「農業振興地域内農用地区域内農地(青地農地)」に該当する部分(906-1、907-2)は、今後も優良農地として維持すべき土地として、農地以外への転用が不可能であるため、この土地を農業関係者以外に譲渡することが難しい状況となっています。

地元に物件を引き継ぎたい農業関係者が見つからない状況もあり、さらに青地農地が宅地の四方を囲むように設定されているため、たとえ宅地や建物を第三者に譲渡できても、宅地が袋地となって道路に接面しない問題も浮上しました。

宅地が譲渡できた場合にも袋地となるため、そこに新たに建物を建てることができない

現在、物件の譲渡は暗礁に乗り上げています。

空き家が放置される昨今、この相談者は物件の相続人として責任を持ち、積極的に行動を起こして当サイトに申込みをされました。

農地法が農地の転用を制限していることを考慮し、農業委員会に地元農業者への斡旋を依頼する一方で、当サイトにおいても農地取得有資格者からの応募を呼びかけています。

農村地帯で育ち、相続をされた方にとっては決して無関係の話ではありません。

今後の経過については、進展があり次第詳しく述べる予定です。

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