#k01 不動産の評価方法は科学。ウソ?ホント?

土地の時価を求めることを、土地の評価とか不動産鑑定とか称しているが、大半の人は、その仕組みを知らない。

為替にしても株式にしても、時価は刻々と変わるが、事前に時価は分からない。
土地の価格も、実は良く分からない。

売る人がいて買う人がいれば売買は成立するが、いなければ何時まで経っても売買は成立しない。

市場に成り代わってとはいうものの、取引がなければ市場そのものがよく分からない。市場がある株式や為替でさえ分からないのに、市場のハッキリしない不動産なら、尚更のことである。

ところで、売買する人は、何を根拠に価格を決めているのだろうか。

不動産を売買する人(法人も含む)は、一生に一度か二度くらいであり、プロではない。

仕入れて売るなら仕入れ価格が基準になるが、それでは仕入れ価格はどうやって決めるのか。

不動産は持ち運びができないので、その場所で使う人がいなければその価値を見出すことは困難である。一方、不動産を商品として所有している人は少ないので、価格を含む情報の非対称性は極端である。

その結果、田舎に行くほど取引価格は跛行的になることが多い。

前置きはこのくらいにして、土地評価の方法をおさらいしてみよう。

土地の評価の方法としては、取引事例比較法・収益還元法・原価法の三種類がある。これは、万国共通である。

取引事例比較法は、売買しようとする不動産と類似する不動産の実際の売買事例を参考に求める方法。
収益還元法は、賃貸により得られる地代や家賃を基準に求める方法。
原価法は、新規に作ったらいくらコストがかかるかを計算して求める方法。

理論的に言えば、この三つの評価方法で価格を求めると一致するはずだと考えられている。

しかし、世の中そう甘くはない。

取引事例は個人情報だと言いながら、その個人情報を集めて評価しなければならないが、収集する権限について、法律上明文の規定はない。わずかな取引事例で適確な評価をすることはできないのに、調査権がないのでお手上げである。

収益還元法は、地代・家賃を基にその収益性の観点から評価する方法だが、これまた個人情報のかたまりで、その情報を収集するのは一筋縄ではいかない。

原価法は、主に建物評価において採用されるが、完成した建物の壁の中は見えないし、また新規に建築すると想定した場合の再調達原価の査定にしても、それを求める科学的方法はない。

建築業者の意見もバラバラだから、評価者により変わることが多い。そもそも評価方法は観念的には理解できるとしても、科学的に適用する方法は未だ確立されていない。

評価に再現性も検証性もないので、科学への道は遠い。


著者:不動産鑑定士 堀川 裕巳(北央鑑定サービス株式会社 代表取締役)

出典:鑑定雑感 2023年5月18日「土地評価のウソ・ホント ~ Vol.1

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