取引がなければ、実のところ価格は分からないと思うのは、素人の浅はかさということらしい。
取引がなければその町の事情に詳しい人を捜して取引事情を取材し、売買が成立するであろうと思われる価格を推定し、その価格に合うようなデータを集め、もっともらしく説明する他はない。
ある意味、虚構かもしれないが、他に方法がないので仕方がないと考える。
しかし、これは単に一人の評価者の意見ということにすぎない。
土地価格をコンピュータ上でシミュレーションして求める方法が確立されればより科学的とは言えるが、市場で生起する価格現象を、少ないデータ量で説明できるとは思えない。
何故なら、客観的なデータが大量に存在する為替や株式市場の価格を求めることができないからである。
不動産だけが一般財とは異なる市場だとでも仮定しなければ、無理と思われる。
一部の学者は可能と主張しているが、それならば公的評価は全て科学的に対応可能ということになる。
それなのに、科学的対応が未だ実現していないのは、何故だろうか?
公的評価には相当の予算が使われている。
実現すれば、国民の負担は激減するので、学者は本腰を入れて研究すべきと考える。
- 著者:不動産鑑定士 堀川 裕巳(北央鑑定サービス株式会社 代表取締役)
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出典:鑑定雑感 2023年6月1日「土地評価のウソ・ホント ~ Vol.3」