取引事例比較法の適用の具体的な仕組みは、次のようになっている。
取引事例価格×事情補正×時点修正×標準化補正×地域格差×個別格差=比準価格
取引事例は、土地鑑定委員会が全国的なアンケートにより調査している。
回収されたアンケートは、地価公示分科会と称する分科会に所属する担当不動産鑑定士に割り当てられ、事例カードが作成される。
その際には、駅距離とか道路の状況・画地状況等を調査することになるが、大変な作業となる。
特に地方ほど遠隔地に行かなければならないので、担当地域との往復だけでもその負担は大きく、そのせいか、地価公示作業の大半は事例カード作りとなっている。
それはともかく、取引価格が正しいとしても(明らかに間違っていると思われる回答もあるようだ)、取引事例の時点修正(変動率)をどのように判定するかである。
実際、町村によっては数件の取引しかなく、それぞれの取引事情等から年間どの位の地価変動があったか、分かるはずもない。
分からないので、取引事例の変動率は、市町村毎に、用途毎に、住宅地なら一律○○%、商業地なら一律○○%と処理している。
そうではない市町村があったらご容赦願いたい。
ところで、取引事例の価格がマーケットでどのように変動したかということが事前に分かるのに、その地域の公示価格の変動状況は鑑定しなければ分からないというのは、論理的に矛盾する。
疑問のある方は是非、開示されている地価公示の評価書の2枚目を良く良く見比べて欲しい。
取引事例比較法は、その方法自体に矛盾を抱えているが、誰も議論しようとしない。
- 著者:不動産鑑定士 堀川 裕巳(北央鑑定サービス株式会社 代表取締役)
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出典:鑑定雑感 2023年6月15日「土地評価のウソ・ホント ~ Vol.5」