k05 公示価格は取引の指標。ウソ?ホント?

地価公示法では、土地の取引を行う者は、公示価格を指標として取引を行うように努めなければならないとしている。

しかし、地価公示法なんて誰も気にしていないので、公示価格を指標に取引する者はいない。

田舎では、タダで、しかも固定資産税の10年分を負担するから引き取ってもらえないか、と相談しても、要らないと言われることがあると聞いている。

ある税務課では、納税者から不動産を処分したいが、いくらなら売れそうかと相談されたが、固定資産税評価額の半分くらいではないかと答えたそうだ。

答えた方も答えた方であるが、納税者も評価額が高いのではと文句も言わずに、そんなもんかなと帰ったということであった。

大都市では、公示価格の倍の取引はザラで、中には公示価格の9倍という取引もあったと聞いている。

長期人口推計によれば、東京圏の人口はほとんど減少しないのに、地方は著しい減少が予想されている。

地価水準は人口に比例する傾向があるので、東京圏の地価は高く、地方は低下するばかりとなるが、実勢地価との乖離を放置していると、税負担は田舎ほど重くなり、税負担の不公平は更に拡大する可能性がある。

公示価格はもはや市場価値とは別モノで、課税のための評価の役割しか果していないと言えるのではないか。

それにしても現状は地方にとって辛い話であるが、市場価値と乖離した公示価格のツケは、やがて納税者に税負担という形で跳ね返ってくることを、国民は知るべきである。

著者:不動産鑑定士 堀川 裕巳(北央鑑定サービス株式会社 代表取締役)

出典:鑑定雑感 2023年6月22日「土地評価のウソ・ホント ~ Vol.6

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